2017年9月4日月曜日

夏のファシリテーションセミナー2017のご報告


こんにちは!にいがたファシリテーション授業研究会事務局 学生スタッフの上山晃平(新潟大学人文学部4)です。8/4()に、にいがたファシリテーション授業研究会主催『夏のファシリテーションセミナー2017』を、万代市民会館にて開催しました。これまで半日間の夏のセミナーを実施してきましたが、今年はもう一歩現場で活用できるレベルまで「1日をかけてじっくり学ぶ場」を企画しました。

次期学習指導要領改訂に向け、「主体的・対話的で深い学び」が教育界のキーワードになっています。その中で、子どもたちが自ら考え学びを深めていくには、具体的にどのような手立てがあるのでしょうか?
そこで今年は、テーマを「深い学びにつながる思考ツールを学ぼう!〜論理的に考える力を育むには〜」と題しまして、大阪から講師をお招きしました。子どもたちの学びを深めるための思考ツール(考えるための力を育むツール)として、今回はTOCfE(Theory of Constraints for Education,教育のための制約理論)を取り上げ、その実践について学びました。この思考ツールを使うことによって、子どもたちが「答えのない問い(答えが1つではない問い)」に対して自分なりの答えを模索できるよう、視点や視野を広げることができます。
また、「ファシリテーションで生徒同士の関係性は育めているけど、深い学びにつながる思考力を高めていくために必要なことってなんだろう?」という疑問にも迫り、子どもたちが答えのない問題を論理的に考え、主体的に学ぶヒントを学びました。TOCfEは「システム思考」と呼ばれる論理性の高い思考方法と、人間の感情やマインドも含めて考えるあたたかさとを併せ持つ思考ツールです。そのため、ファシリテーションとも親和性が高く、それらの併用によってさらなる学びの深まりが期待できます。

今回お招きした講師はこちらのお2人です。
メインファシリテーター:平方文哉さん

サブファシリテーター:山田慶太郎さん

TOCfEには講師認定制度があり、お2人とも認定講師として活動されています。セラピストや子育てのお母さん向けにも講座を行うなど、幅広い立場の方にTOCfEを教えていらっしゃいます。
学校の先生方はもちろん、企業の方や学生、「考えること」に向き合いたいすべての方まで、21名の多様な立場の方がいらっしゃいました。個人的にも、「どうして自分/この人はこう考えているんだろう?」ということを見える化し、分析できるこの機会を楽しみにしていました(^^)

◆当日の内容:午前の部

ウォーミングアップ&問いづくりワーク
まず、「今日講座に参加した理由は何ですか?」という問いに答える形で、講座に参加した動機をテキストに記入します。その後、それを参加者と共有しました。そのうえで、ウォーミングアップとして「質問づくりの3つのルール」を提示し、「どのルールの何が難しいと思うか」を話し合いました。



次に、「あるテーマ」に沿って問いを出していくワークを行いました。皆さんは、次の写真を見てどんな問いが浮かびますか?
この写真を見て、各グループで問いづくりを行います。もちろん、先ほど提示したルールを基に質問を出していきます。「先生の話がつまらないのかな?」「先生はどんな話をしているんだろう?」といった、教師の働きかけについて考える班もあれば、「この場所はどこだろう?」「この子はどんな気持ちなんだろう?」など、様々な視点から多くの問いが出てきました。
続いて、先ほどつくりあげた問いに即興で答えていきます。こうすることで、状況や背景、この人物について共通了解をつくることができます。このワークで使ったものは、午後のワークでさらに深めました。(後述)

「ブランチ」を学ぶ
 いよいよ、TOCfE(Theory of Constraints for Education,教育のための制約理論) の中心的な考え方・思考ツールである「ブランチ」について学んでいきます。ブランチは、物事の「原因」と「結果」を簡単なハコと矢印で「つなげる」ことができます。「○○という原因があったから、△△という結果になった」というつながりを見える化することで、思考の理解を深めることができます。



 まずは、ブランチを使って「つなげる」練習をするワークを行いました。皆さんは、次の原因があるとどのような結果が現れると思いますか?例えば、「給食を残す」という「原因」に対して、その結果は何が起こるでしょうか?参加者の皆さんの答えも、「痩せる」「給食センターのおばさんが悲しむ」「残飯が増える」というように、人によって考える「結果」はかなり異なっていました。このように、まずは「同じ物事に対しても、人によってその見方・考え方は多様である」ということを実感しました。
次に、ブランチを使いこなすためのワークを行いました。自分が大事だと思うところを「原因」と「結果」でつなげる、つまり自分の理解を素直に書き出せることを出発点として、ブランチは縦にどんどん伸ばすことができます。ブランチを伸ばせば伸ばすほど、「自分がなぜこのように考えるのか?」という根っこが見えてきます。ブランチを伸ばす練習を経て、午前のワークは終了しました。

◆当日の内容:午後の部

自分の思考を本当の意味で理解する
午後に入り、午前の部の初めに行った問いづくりワークに立ち返りました。出した問いに対する答えを付箋に書いていき、各グループで模造紙を使いながらブランチを伸ばしていきます。完成した模造紙を見ると、書き出されたブランチによって思考のプロセスを俯瞰することができ、他の人に説明することもできます。ブランチの有用性は、自分の思考を理解できるだけでなく、他者に説明することもできるという点にあります。また、複数人が同じ「原因」を受けて、それぞれが異なる「結果」にたどり着いたとき、「わたしはこういうプロセスで考えました」と説明し合うことで、本当の意味での他者理解にもつなげることができます。

ふりかえり:今日の学びを現場でどう生かすか
 ブランチの理論と実践を学んだうえで、参加者の皆さんに「ブランチ(TOCfE)が、主体的・対話的で深い学びにどうつながっているか?」という問いをテーマに、ご自身の現場でTOCfEがどのように使えるか、話し合いました。「生徒に、自分の気持ちを素直に書き出させることのファーストステップとして使えそう」「中学生の国語科や道徳の時間で、文章の読みを深めるためのツールとして活用できる」など、実践的なご意見が多く出ました。また、「ファシリテーション・グラフィックを学ぶ前に、ブランチを使ったライティングで慣れさせておく」など、ファシリテーション授業との併用も期待できる、との声もありました。最後に、講師の平方さんからTOCfEとブランチのまとめについてお話をいただき、講座は終了しました。



TOCfEは、物事のつながりをより広く深く捉えることができる思考プロセスでありながら、ひと同士の感情にも寄り添えるツールです。正解を探しすぎず、「考えることは自由で楽しい」という楽しさに気付くことができたと思います。自分なりの答えを模索できる力をどうつければよいのか学べた1日でした。学生である私も、この日の学びをファシリテーションと併せて実践できるよう、教育実習などで生かしたいと思います。

お読みいただきありがとうございました!
今回ご参加いただいた皆さまに、重ねて御礼申し上げます。

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次回のファシリテーション授業研究会は10/4() 19:00-21:00です。
テーマは、「ファシリテーション・グラフィックを学ぼう!」としまして、議論を見える化する手法である「ファシリテーション・グラフィック」を参加者の皆さまと学ぶ場を予定しております。
今回お伝えしましたTOCfEやブランチの理論と併用することもできるのではないでしょうか(^-^)

こちらもお申し込みをお待ちしております!

にいがたファシリテーション授業研究会事務局 学生スタッフ 上山晃平】

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